地唄の解説ー8
梅の花笠綾衣館山


地唄 梅の花笠

ささなきと昨日は聞きし鶯の(合)今日はしじに宿しめて(合)逢う蝶、梅の花笠の(合)香りへだてぬ立て一と見住みて流縷々せり水に 移る明日の空色も(合)長閑に霞む初春の(合)初音祝いて千代祝うらん

地唄 綾衣
鶯の都の春にあいたけど気は淀川へ上り船 支えられたる北風に身はままならぬ丸太船岸の柳に引きとめられて歩みならわぬ陸地をも上りつ戻れぬ幾度か 一夜を明かす八軒家 雑魚寝を起こす網島の 告ぐる鳥か寒山寺
三下がり端唄。天明4(1784)年刊『新選詞曲よしの山』に初出。藤谷勾當作曲。作詞不詳。


上方唄 館山

浮世離れて奥山住まい恋も悋気も忘れていたが 鹿の鳴く声 聞けば昔が恋しゅうてならぬあの山越えて来たわいな 峰の白雪ふもとの水 今は互いに隔れていれど やがて嬉しや溶けて流れて添う身じゃないか会いたさ見たさに来たわいな
二上がり端唄。明治20(1887)年頃に大流行した。 当時刊行された小型の歌本に詞章が掲載されているという。内容は、いったんは浮世を離れて、奥山に住み、恋や嫉妬の気持ちも 忘れていたが、妻を呼ぶ鹿の鳴く声を聞くと、俗世間に暮らしていた昔が懐かしくて山を越えて愛しい人に会いに行くという一番と 、峰の白雪と麓の水のように、今は互いに遠く離れているが、すぐに溶けて流れて、あの山越をえて一緒になるのだという二番。 鹿の鳴く声は、「万葉集」にも「妹を思ひ、いの寝らえぬに、秋の野に、さを鹿鳴きつ、妻思ひかねて」とあるように、 古来鹿の声は妻を思うきっかけだったらしい。本曲は、しっとりとした曲調のなかに、情熱的な恋が語られていて、そのギャップも面白い。 昭和10(1935)年前後、小唄勝太郎が曲中に「佐渡おけさ」や「二上がり新内」を挿入し、「館山くづし」を歌い、はやらせたという。


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