地唄舞の解説ー別1
   
長唄 鷺   一中 都若衆万歳


長唄 鷺

妄執の雲晴れやらぬ朧夜の 恋に迷いしわが心   吹けども傘に雪もつて 積もる思いは淡雪の 消えて果敢なき恋路とや   思い重なる胸の闇 せめて哀れと夕暮れにちらちら雪に濡れ鷺のしょんぼりとかわいらし  迷う心の細流れ ちょろちょろ水の一筋に 恨みの外は白鷺の水に慣れたる足取りも 濡れて雫と消ゆるもの 我は涙に乾く間も袖干しあえぬ 月影に忍ぶ其の夜の話を捨てて
縁を結ぶの神さんに取り上げられし嬉しさも余る色香のはずかしや 繻子の袴の襞とるよりも 主の心がとりにくいさりとは実に誠と思わんせ
しやほんにえ 添うも添われずあまつさえ邪見の刃に先立ちて此世からさえ剣の山 一じゅうのうちに恐ろしや地獄の有様悉く 罪を糺して閻王鉄杖正にありありと等活畜生衆生地獄或は叫喚大叫喚 修羅の太鼓は隙もなく 獄卒四方に群がりて鉄杖振り上げ黒金の 牙噛み鳴らしほつ立てほつ立て 二六時中がその間 くるりくるり追い廻り追い廻り 終に此身はひしひしひし 憐れみたまえ我が憂身

一中節 都若衆萬歳(みやこわかしゅうまんざい)

 着き給ふ、時に警固立ち出でて、只今是へ飾りし家台の様子、事変わり見ゆるなり、 定めて是は皐月の前の風流都若衆万歳の唱歌ならめ、早一曲をと急ぎける。
はつと答えて立ち出づる、袖なし羽織手綱帯、きりりきりりと振り廻し、 はあ是は毎年参る猿若にご在ります。ほの糸薄、鳴らす調べの時を得て
徳若に御万歳と君も栄えまします。愛嬌有りける宇源次花づま霧波の、かかる目出度き 小倉の君の、面体にほだされてここまで浮かれ来りて、百万両楯について、初めててんほを召されけるは、誠に目出度うさむらひける。
昔の京は奈良の京、八重に桜の大和川、中頃は難波津に、よいこの花と詠まれたる、歌村の振も芳沢のあやめの花蔓、今の狂言上手にて、 よろづ世の中のあの御泰平、太鼓の音がとうからから、とうからから、とうからからと、名に立つ水木が舞扇、人を見る目のうちもたれたる。
一本の柱は、幾千代かけて舞ひ歌ふ、二本目出度く飾り立てたる竹島の、近松風も長閑なる。
三本の柱暦に、大名日と岩井の水の、瀬川岸田の所作せりふ、あっぱれ沖漕ぐ楫の音、これさ 太夫殿お船がまいる。おおさ 合点ぢゃお目出度い、
やんらやんらお目出度い代のほん帆かけ船、四海波静かにならす枝も栄えて、のんえい木の葉も、茂りあひたる小松原、海津の里に行き違ふゆかり嬉しき袖島に、 思ひかけたる橋本の、君と我とが中村の、えい竹中清き顔ばせに、市村雨の濡れ初めて、槇の笹原さらさらと、
先づ一番に武蔵野や、尾形葦毛の乱れ髪振り分け振り分け行けば、雪の蹄のよつじろや、花橘の鹿毛かす毛、柑子栗毛も有明の月毛かはら毛雲雀黒、連銭葦毛虎薄毛、 甲斐の黒駒常陸白陸奥だちのあら駒を、君の齢にひきそふる、千秋楽万々歳とぞ祝いける。



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